インプラントについて
■ 歯を失うと人生のチャンスも失う?
歯を失うと多くの人が自分の人生に消極的になる傾向があります。
しかし、現在の治療技術は進歩しており、1本の歯牙欠損から総歯牙欠損まで、天然歯と同様の環境を口腔内につくることができます。それがインプラント治療です。治療の選択にあたっては、歯科医またはインプラントを専門とする歯科医への相談をおすすめします。
■ 自信と笑顔を回復する最初の重要なステップを逃すことのないように
インプラントは顔貌の早期高齢化につながる骨喪失を防止します。
歯の喪失は身体的にも美容的にも影響を及ぼします。
(1)歯が減少することにより咀嚼機能が失われ、食事の摂取が困難になります。また、骨喪失という深刻な問題にもつながります。
(2)顎骨(上顎骨,下顎骨)は強度を保つために、咀嚼運動による刺激を必要とします。そのため、咀嚼機能が失われると筋肉が萎縮して,顔は老けたような表情になります。笑顔の変化は見た目でも明らかです。
インプラントは、骨喪失を防ぐため、若々しさを保つことができます。
欠損歯補綴の選択肢
歯牙補綴の治療選択肢であるクラウン・ブリッジ、部分義歯または総義歯は、歯牙欠損による美容上の問題を短期的には解決しますが、骨喪失の防止にはなりません。またクラウン・ブリッジは2本以上の生活歯(神経・血管の通った生きた歯)を支台歯にする必要があり、う蝕(虫歯)などのリスクを伴うことが指摘されています。
インプラントは、支台歯の必要がないため,健康な歯牙をそのまま残すことが可能です。さらに、天然歯と同様に顎骨へ咀嚼力を伝達するため、骨喪失を減少させることができます。このことが多くの先進歯科団体が口腔インプラントを欠損補綴の標準治療と認めている理由なのです。
未治療の欠損歯 |
従来のクラウン・ブリッジ |
歯冠を伴うインプラント |
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・外観が不良 ・咀嚼機能の損失 ・骨喪失が加速 |
・外観が良好 ・健康歯を形成 ・ブリッジ下の骨喪失 |
・外観が良好 ・良好な咀嚼機能 ・骨喪失なし |
治療対象者について
インプラントはほとんどの健康な成人に適応されます。しかし、身体の成長が十分でない青年期には行わないのが一般的です。治療開始前に専門の歯科医と十分にご相談ください。インプラントによる補綴治療が正しい選択であるかどうか、その長所とリスクについて歯科医に説明を求め、患者さんご自身が納得して治療を受けることが重要です。
歯科インプラントの歴史
歯牙補綴には古い歴史があります。ある考古学者は、鋳鉄や刻んだ貝殻などを材料にした補綴物を施してある古代の頭蓋骨を発見したこともあります。原始的な手段や材料を用いた大昔のインプラントでも、骨との結合が認められたものもありました。現代では、骨とインプラント体との結合をオッセオインテグレーションと呼びます。インプラント手術の成功に、オッセオインテグレーションは最重要とされています。
1970年代からチタニウムによる口腔インプラントが広範に行われてきました。その理由は、軽量で強く、拒絶反応がない(生体適合性)という利点があるからです。矯正の連結補綴や口腔インプラントに最も広く使用されています。チタニウムは体内に埋入された外科的な器具の中で、口腔インプラントが最も成功率が高いといわれています。
現代の口腔インプラント
現代のインプラントは精度が高く、患者さん個々のニーズに合わせたデザインも豊富に揃っています。最も一般的なタイプはチタニウムスクリューで顎骨内に固定され、カスタムメイドの歯冠部のポストとして使用されています。歯冠が装着されると、天然歯と区別がつかないほど綺麗な仕上がりになります。
インプラントによって外見だけでなく、機能的にも改善され、好きな食べ物が食べられるようになります。
天然歯の欠損後、骨喪失を防止する唯一の実証された手技がインプラントです。
インプラントによる補綴は、患者さんのQOLを向上させることが多くの研究で示されています。
単歯欠損補綴
十分な骨が存在する場合には、欠損歯補綴にインプラントが使用されます。骨が存在しない場合や極端に少ない場合には、インプラントを安全に埋入するために、十分な骨を再生させる処置をとります。インプラントを歯肉組織下の骨に埋入し、テンポラリーアバットメントは治癒期間が終了するまで取り付けたままにします。また、審美上の問題から一時的に欠損部位を充填する歯冠をつくることもあります。詳しくは専門の歯科医師にご相談ください。
治癒後は、インプラントにアバットメントが付けられます。これが、患者さんの口腔に調和した天然歯と同等の歯冠を支えるようになります。
最終段階で、カスタムメイドの歯冠をアバットメントの上に接着させます。歯牙は健康な隣在歯を阻害することなく補綴され、骨喪失は停止します。
複数の歯牙補綴
従来のクラウン・ブリッジ治療では、支台歯の役割をする健康な隣在歯を削りますが、インプラントではその必要がありません。複数の補綴も治療できます。
インプラントは歯肉組織下の骨に埋入されます。単歯補綴と同様に、テンポラリーアバットメントを治癒期間終了まで一時的に取り付けたままにします。
治癒後、インプラントにアバットメントが付けられ、これが天然歯に合うよう技工所で製造されたカスタムメイドの歯冠を支えるようになります。
最終段階で、カスタムメイドの歯冠がアバットメントの上にセメントで付けられます。歯牙は健康な隣在歯を阻害することなく補綴され、骨喪失は停止します。
インプラントで支える義歯(着脱可能)
下顎歯が全て欠損した場合には、5本のインプラントが下顎の義歯を支えるために使用されます。
上顎歯が全部欠損した場合は、6本以上のインプラントが上顎の歯を支えるために使用されます。
インプラントは歯肉組織の下部に埋入され、骨と結合するまでテンポラリーアバットメントがインプラントの上に付けられます。治療プロセスにおいてインプラントを阻害することのないよう、現在ある義歯を改良することも可能です。
新しい義歯を支えるため、インプラントに付けられるカスタムメイドのバー(補綴物との連結装置)を適合させます。現在の義歯をこの期間内にも付けることができるように改良します。
新しい義歯には留め金かクリップで取り付けるアタッチメントが付いています。新たな歯牙は顎によって強く支えられ、顎に刺激を与えて骨喪失を防止します。また、洗浄のために義歯を着脱することも可能となります。
インプラントで支える補綴物(固定型)
下顎または上顎の歯が欠損した場合には、永久的なブリッジをインプラントに直接取り付けることができます。その際、インプラントの本数はそれぞれの症例に合わせて決められます。
インプラントは歯肉縁下に埋入され、骨組織と結合するまで時間を要します。
そのため、テンポラリーアバットメントが治癒期間終了まで、一時的にインプラントの上に付けられます。その際、治療プロセスにおいてインプラントを阻害することのないよう、現在ある義歯も改良することができます。
骨の再生が認められると、インプラントに直接留められるカスタムメイドのブリッジを適合させます。スクリューの穴は挿入後に覆われます。
新たな歯牙はしっかりと顎で支えられ、顎に刺激を与えて骨喪失を防止します。歯科医は洗浄やメインテナンスのために補綴物を着脱することが可能です。
インプラントで固定した義歯
下顎歯が全て欠損した場合には、2~4本のインプラントが下顎の義歯を固定するために使用されます。
インプラントは歯肉縁下に埋入され、骨と結合するまで時間を要します。その間テンポラリーアバットメントが治癒期間終了まで、一時的にインプラントの上に付けられます。治療プロセスにおいてインプラントを阻害することのないよう、現在ある義歯を改良することもできます。
歯科インプラントは弛んだ義歯を安定させることもできます。治療後、先端がボール状のポストをインプラントに装着します。この場合、ボール状の先端を留めるクリップに合うよう古い義歯を改良するか、クリップ付きの新たな義歯を製作します。
義歯はインプラントに付けて保持され、軟組織によって支えられます。義歯の洗浄は、従来どおりですみます。